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ロン物語12

12
シロとロンは2日間歩いてやっと住む場所を決めました。
そこは広大な芝畑の端でその向こうはただの荒地です。
人もいないし、他の犬のにおいもしないところでした。
それに雨をよけるのにちょうどいい古びた小屋もありました。

やっと安心、二人はしっかり抱き合ってお互いをなめあいました。

<ねえ、シロ。シロは家を出てきちゃって、後悔していない?>
<え?あぁ、してないよ、後悔なんかするものか>
そう言いながらシロはおばあさんのことを思い出していました、でも今はロンのことが誰より好きです。
<ロンは?あの広いおうち、思い出さない?>
<思い出すけど、戻りたいとは思わない。だってお家の人たちみんな、時計に心を食べられちゃったの。大きなハツカネズミのおじさんがそう言っていたの。
私は自分の生き方を自分で選んだの。>
ロンは空を見上げて言いました。

夏の風がロンの茶色の毛を撫ぜていきます。
ロンのお腹には可愛い赤ちゃんがいました。
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テーマ : 児童文学・童話・絵本
ジャンル : 小説・文学

ロン物語11

11
二人の生活は、思っていた以上に大変でした。
いつもお腹をすかして食べ物を探さなければなりません。
それでもロンはシロに教えてもらって、
何とか生きていけるくらい食べ物を見つけることができるようになりました。

<これは食べられる草。この実も食べられるよ。>
<今の季節は人間が草に薬をかけるから、このにおい覚えておいて。
絶対口に入れちゃだめなんだ。>
<これ、よく道におちてるけれど、これも食べちゃだめ。
毒のある葉っぱを巻いたものなんだ。
<カラスがいるところは良く探すと、美味しい骨とか落ちてるよ。
それから落葉の中に食べ物が隠してあったりして・・・>

とにかくロンと一緒に生きていくことだけをシロは考えていました。
もちろんおばあさんの様子をみたいとも思いましたが、周りに雄の野犬が多くて
ロンを一人にしておくのが心配でした。
ロンは知らない人をすごく怖がっています。
雑木林の中でシロと一緒に過ごすこと、ロンは一番それを望んでいたので、シロもためらいはありません。ロンの幸せがシロの幸せでしたから。

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ロン物語10

10
ロンにとって家のすぐ近くでも
そこは別世界でした。
ロンは走りながら思いました。
<何もいらない、ただシロがいてくれればそれでいい。
もうおうちにはもどらない。もどりたくない・・・。>

シロはロンの先にたって走りました。角の白菜畑、そこにはもう白菜はなくて小さな芽が一列に顔を出していました。
そこを左に曲がればシロの家。
でもシロはまっすぐどこまでも走っていきました。そして小さな雑木林にはいって、
やっと二人は安心しました。
シロとロンはしっかり抱き合いました。
ロンもシロも幸せでした。
辺りは暗くなって肌寒くなってきましたが、
お互いのぬくもりを感じて、生まれて初めて心から安心しました。
それは生まれる前の、
お母さんのお腹の中にいたときの懐かしい感覚に似ているのかもしれません。
ロンはすべてを捨ててシロと一緒に来てしまいました。
そんなロンが愛しくて、シロは全力で守ろうと心から思います。
でも夜になるとおばあさんのことが頭をよぎりました。
<昼間、近くに様子を見に行けばいいことだ・・・>そう考えて目をつぶりました。

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ロン物語9


晴れている日にはシロは必ずロンのところに行きました。

シロはいろいろな不思議なことをロンに話します。
<ねぇ、ロン、虹って見たことある?
すごいよ
雨の後の空に架かる橋みたいで7色に光ってるの>
<すてき!!>
ロンが空を見上げたとき風がひゅ~と吹いてきました。
街路樹の牡丹桜の花びらが宙を舞って。
その時
き~
鉄の音がわずかに聞こえました。

それは庭から外に出る扉が動いた音でした。
いつもなら必ずしっかり閉まっているところなのに
今日に限って門が風に少しだけ動いています。

ロンは思わず駆け寄ってさわってみると、
簡単に開きます。

ロンはフェンスの外のシロのところに走りよりました。
シロははじめ驚いていました。でもすぐ力強く一言。
<行こう>

二人は鼻をなめあって

それから走りました。

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ロン物語8


シロは今まで忘れていたような思いが心を満たしていました。
ロンと話しが出来る、何て幸せなんだろう。
ロンの為なら何でもしてあげたい、ロンが好きだ、ずっと一緒にいたい、
そしてロンをしっかり抱きしめたい、・・・
そんな思いが心を満たします。
ロンは、夜、独り思います。
この気持ちは何?一日シロのことを考えてる・・・
ここでは何にも不自由なく暮らしていけるけど
ずっとこの庭の草をお友達にして、それでおばあさんになっちゃうの?
・・・それだけじゃ哀しすぎる。自由に生きたい。
そんなことを思って独りため息をつきます。

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ロン物語7


次の日もシロはロンのところに来て
フェンス越しにお話してくれました。
<今日はもうすぐ雨が降るからあまりお話できないね>
<すごい!なんでわかるの?>
<ほら、あの筑波山の上のほうに雲がかかってるでしょ?夕方は雨だよ>
<あれはなあに?たくさんいる!>
ロンは空を見上げました
<あれ、白鳥さ。いつもこの先の沼に遊びにくるんだ。おじさんがパンをやってるから、それでみんなでそれを食べるの。カモとか他の鳥たちも一緒にね>
ロンは想像してみました
あんな空の上のほうを飛ぶ白鳥が水の上に浮かんでいる様子・・・
ロンは空も飛べないし、沼を見たこともない。
ロンもいろんなところに行ってみたくなりました。
語るシロの目はとても耀いています。
ロンはフェンスの間から、シロの鼻をなめました
シロもロンの鼻をなめました。
二人はとても幸せでした

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ロン物語6


<こんにちは~>
シロの大きな声にロンはびっくりしました。
初めてでした、そういう風に声をかけてくれるなんて。

<こ、こんに・・・ち・・・は・・・・>
ロンはそう言うのが精一杯、ちょっとだけ離れて、もう一度シロを見ました

<あ、いかないで。怖がらないで。
ボク、シロって言うの。近くに住んでいるんだよ。>
<・・・・>
ロンは思いました。
(大きいけれど、優しい目をしてる・・・・)
<ここに来たばかりなの?
ボクここが空き地のときからこのまわりのこと知っているんだよ>
<・・・>
<さっき、君の可愛い声が聞こえてきてさ、
思わず来ちゃった。>
そう言って、シロは、ロンの近くに行きたくて、フェンスの隙間に鼻を入れてみました。

フェンスに挟まった鼻が可笑しくて、思わずロンは笑ってしまいました。
ロンは久しぶりに笑いました。
シロはロンが笑ったのが嬉しくて、一緒に笑いました。

夕方は風がとても冷たいけれど、
シロとロンの心には何かほっこりあたたかいものがしたものを感じていました。

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ロン物語5


ロンはお母さんお父さん、それに小学校3年生の舞いちゃんと一緒に住んでいます。
この土地に引っ越してきて1ヶ月です。
ロンのうちではみんなとても忙しく暮らしています。
お医者さんのお父さんは前よりずっと忙しくて、いつもいないみたいです。
お母さんも、新しいおうちに来てから働き始めました。
小さいころはよく一緒に遊んだ舞ちゃんもお稽古とか塾とか、毎日忙しいので、
最近はロンのことを忘れてしまっているみたいです。
ロンはお散歩に連れて行ってもらっていないので、お庭だけが世界でした。
でももちろんロンは不満を持っていたわけではありません。
みんな一生懸命暮らしていることをちゃんと知っていましたから。
でも、ちょっとだけ、ほんのちょっとだけさびしくて、
そんなときはワンワンク~ンと声を出しています。

今日も遠い世界に憧れるように空を眺めて吼えてみました。
そうしたら大きな太い声が聴こえます。ワンワン
しかもすぐそばです。

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ロン物語4


青空がとても気持ちのいいあくる日
シロは再び、昨日の空き地に行ってみました。
また聴こえました。
昨日よりはっきりと聞こえました。
ワンワン・・・ク~~・・・
シロはその声にひきよせられるように歩きました。
道の向こうの新しい家の立ち並ぶ辺りです。
道を渡っていくと道行く人はみんな驚いてシロからはなれてすれ違います。
そう、シロは毛の長い少し大きな犬なので、怖かったのでしょう。
ワンワン、ワンワン
可愛い声とうっとりする香り、ここだ。フェンスに囲まれた庭で
茶色の犬、尻尾がくるっとまるまった、女の子です。
この犬がロン。
シロはフェンス越しにロンを呼んでみました。
優しい声で呼ぼうとしたのに、太い声しか出ませんでした。

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ロン物語3


シロは昼間は一回りして縄張りを見て歩きます。
古い家と大きな芝畑。
その向こうには道路があってその向こうには何か大きな研究所です。
大きな道路の少し手前、白菜の畑のところを曲がって、
その向こうに空き地があって
そこに古い梅木があります。
その下がシロのお昼寝の場所。
梅の花の香りとメジロの声
シロはいつものようにうとうとしていました
と、すると遠くからワンワン、可愛い声がしました。
あれ?夢かな~。
辺りは変わらない空き地。
可愛い声とうっとりするような香り、
おかしいな~誰もいない。

この空き地の先は何もない雑木林だったのに、いつの間にか細かく仕切られて、
まっすぐな道が出来て新しい家が建っていました。

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ロン物語2



①出会い
 やっと梅がちらほら咲き始めたが、朝は厳しく冷え込んでいます。
シロは頭をお腹の中にすっぽり入れて、丸くなっていました。
犬小屋ではなく濡縁の下が、シロの寝床。
新聞屋さんのバイクの音に驚く様子もなく、
こうやって毎日、
お婆さんが母屋から出てくるのをうつらうつらしながら待っています。
眠っているようですが、
シロはお婆さんが母屋で何をやっているのかちゃんと分かりました。
それは毎日正確に同じなのです。
まず始めにゆっくりゆっくり歩く音、ドアの音、暫くして戻ってくる音。
少し経つと、がたんがたんと重い雨戸の開ける音。
その次に遠くのほうでピーと鳴る音、お湯が沸いたみたいです。
それからすぐまた足音。
ピーが終わったら、程なくシロのところに来るはずです。
「シロ、おはよ~。おめぇはいつも早いなぁ。
よしよし。まってな。今あげっから。」
多分お婆さんの夕ご飯の残り、そしていつも柔らかくなった煮干。シロの大好物です。
シロはありがとうとふさふさの長い白い尻尾の毛をゆさゆさ揺らします。
おばあさんはシロにご飯を上げてから、ニワトリに餌をやって、畑に行ってなにやら野菜を少しばかり持ってきて、また母屋にはいります。
お婆さんは自分より、ニワトリよりも、シロに先にご飯をあげます。
「なあ、シロ、おめぇが一緒でわしはいかった、、、あめぇさいるからげんきでいれぃる。シロ、ありがとな~、さ、たくさん食え、食え、な、」
 もう長いことlこの大きな家にお婆さん独り暮らし。
「さ、腹いっぱいになったら、好きなところに遊びに行って来いな」
そう言って、いつも昼間は鎖をはずしてくれます。
シロは一回大きな伸びをして、それからとことこ芝畑の法に歩いて行きます。
もちろん決った目印にマーキングをしながら。

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ロン物語1


初冬の風の強い日
ケヤキの落葉の吹き溜まりに
1匹の犬がうずくまっていました。
もうすっかり弱っていました。
ロンです。
ロンはもう食べることは出来ませんでした。
目を閉じて、シロのことを考えました。
そうして4匹の子どもたちのことが頭に浮かんで、そして消えていきました。
シロの声が遠くで聴こえました。

それだけで、十分幸せでした。

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